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10. その他のネットワークに関する追加知識

10.1. その他のワイヤレスLAN

IEEE.802.11以外のワイヤレスLAN規格を以下に示す。

ワイヤレスLAN

10.1.1. WIMAX

WIMAXはマイクロ波を利用した世界標準の通信方式。 WiMAXは、当初は例えばユーザ宅と基地局間の長距離の固定の無線通信を目的としていた。

WiMAXの技術に移動体を想定したハンドオーバー(接続する基地局を切り替えること)の仕様を追加した規格のことをモバイルWiMAXと言う。IEEE802.16e-2005で策定されている。

10.1.2. LTE

LTEはモバイル通信の通信用規格。 厳密には第3世代(3G)の拡張版(3.9G)のデータ通信を高速化した規格となっている。

LTEはWIMAXよりも高いデータ転送速度と低い遅延を実現している。 なおIEEEではなく3GPPにより規定されている。

10.1.3. BlueTooth

Bluetoothとは10m~100m以内の近距離で端末同士を1対1でワイヤレス接続することを想定して作られた無線通信技術である。

Bluetooth

10.1.4. ZigBee

ZigBeeとは、IoTやセンサーネットワーク、家電の遠隔制御などに用いられる近距離無線通信規格の一つ。通信速度は遅いが低消費電力で、多数の装置がバケツリレー式にデータを運ぶメッシュネットワークに対応している。 組み込み系の機器の通信によく使われる。

10.1.5. LPWA

LPWAとは「Low Power Wide Area」の略で、「低消費電力で長距離の通信」ができる無線通信技術の総称のことで、最大伝送速度は100bps程度、伝送距離は最大50 km程度。 他の通信方式と比べて、特性が「IoT/M2M」に非常に適しているため、IoT分野の通信に広く利用されている。

10.2. その他のデータリンク層のプロトコルと通信規格

10.2.1. ATM(Asynchronous Transfer Mode)

ATMは広域通信網などで利用される通信プロトコルの一つで、データを53バイトの固定長のセル(cell)と呼ばれる単位に分割して伝送する方式である。

10.2.2. POS(Packet over SONET)

POSとは、パケットを、ATMを使わずに直接SONET/SDHフレームに格納して転送する通信の総称。略称は「POS」。 ATMを用いる従来のIP over ATMなどと比べて、オーバーヘッドが小さいが、ATMのQoSなどの機能が利用できないという欠点もある。

10.2.3. ファイバーチャネル

ファイバチャネルとは、コンピュータと周辺機器間のデータ転送方式のひとつ。「FC」と略されることもある。 接続には最大転送速度32Gbit/sの光ファイバーや同軸ケーブルなどを使用し、最大伝送距離 10kmと、長距離区間の高速データ転送を実現する。

10.2.4. ISCSI

ISCSIとは、コンピュータ本体とストレージ(外部記憶装置)の通信に用いられるSCSIコマンドを、IPネットワーク経由で送受信する通信規約(プロトコル)。TCP/IPベースのコンピュータネットワークにストレージ装置を直に接続することができるようになる。

10.2.5. IEEE1394

IEEE 1394とは、コンピュータと周辺機器やデジタル家電などをケーブルで接続するための通信規格の一つ。最大で63台の機器をデイジーチェーン(数珠つなぎ)接続またはツリー接続することができる。転送速度は初期の規格では100Mbpsだったが、その後3.2Gbps(3200Mbps)まで高速化されている。

10.2.6. HDMI

HDMIとは、「High-Definition Multimedia Interface」の略で、映像・音声・制御信号を1本のケーブルにまとめて送ることができる通信規格のこと。今までは音声・映像信号ごとに色分けされたケーブルが何本か束になったオーディオケーブルを使用していたが、HDMIでは映像・音声の両方を1本のケーブルで送ることができる。配線がシンプルなため、テレビやパソコン、ゲーム機など様々な機器で使われている。

10.2.7. DOCSIS

DOCSISとは、ケーブルテレビ(CATV)の回線を利用して高速なデータ通信を行うための規格。もともと北米の業界団体などが推進していもので、ITU-TS(国際電気通信連合)によってJ.112として標準化された。仕様の検討や製品の認証などは業界団体のCableLabsが行なっている。

10.2.8. 高速PLC

高速PLCは電力線を通信回線としても利用する技術。 450kHz以下の周波数を用いるものを低速PLC、2-30MHzを用いるものを高速PLCと呼ぶこともある。

10.3. その他のルーティングプロトコル/アルゴリズム

10.3.1. RIP

RIPの概要

RIPは最も基本的なルーティングプロトコルで市販ルータにも搭載されている。 特徴は以下の通り。

  • ディスタンスペクタ型
  • ルーティングアップデートは30秒ごとに送信
  • メトリックはホップカウントのみ
  • ホップカウント(通過ルータ数)が16になるとパケット破棄

RIPv2の概要

RIPv2はRIPv1の改良バージョン。 特徴は以下の通り。

  • アップデート認証機能の追加
  • ルーティングアップデートの送信がマルチキャストに変更
  • クラスレスルーティングに対応

10.3.2. BGP

BGPの概要

BGPはAS間で経路情報を交換するEGPのルーティングプロトコル。 つまりISPが管理しているネットワークなどで使用される。 特徴は以下の通り。

  • パスベクタ型
  • 転送プロトコルにTCPを使用
  • ルーティングアップデートは定期的に行わず、変更発生時にのみ差分アップデートする
  • 60万ルート以上をルーティングテーブルに保持可能

BGPのAS番号

BGPではインターネット上での各ASを識別するために番号(AS番号)を割り当てる。 ISP以外にも、大企業、学術研究機関なども1つのASが割り当てられている。

AS番号はICANNという組織により、RIR(Regional Internet Registry)にブロック単位で割り当てされる。 日本ではJPINICやAPNICがAS番号の割り当てを管理している。

またAS番号はグローバルAS番号プライベートAS番号の大きく2つに分類できる。

AS番号 AS番号の範囲 用途
グローバルAS番号 1 ~ 64511 インターネット全体で一意のAS番号
プライベートAS番号 64512 ~ 65535 組織内部で自由に使用できるAS番号

BGPの特徴

BGPでは転送プロトコルにTCPを使用して信頼性のあるルーティングアップデートを行う。 BGPでは定期的なルーティングアップデートは行わず、変更発生時にのみ差分アップデートを行う。 また、BGPではパスアトリビュートという属性をルート情報に付加することによって、経路制御を行える。

10.4. インターネットの接続方式

10.4.1. PPPoE接続方式

PPPoE接続方式は電話回線を前提としたルールであるPPPをイーサネットへ応用した接続方式を指す。

PPPoE方式の場合、インターネットに接続するときに必ずONU(ネットワーク終端装置:電話網とインターネット網を接続する装置)を経由することからトンネル接続方式と呼ばれることもある。

特徴は以下の通り。

  • PPPoEは必ず通信回線をクライアントの通信機器に接続するための機器であるネットワーク終端装置(NTE)を利用する。これには1つのネットワーク終端装置に対して収容できるセッション数が決められているためトラフィック量が増加していくと通信速度が遅くなる

10.4.2. IPoE接続方式

IPoE接続方式は直接インターネットに接続できる接続方式を指す。 またネイティブ接続方式と呼ばれる。

IPoEではネットワーク終端装置(NTE)を必要とせず、ISPを経由してインターネットに直接接続できるため、ネットワーク終端装置での遅延などが発生しにくい特徴がある。

IPoEの利点と欠点は以下の通り。

利点は以下の通り。

  • 高速通信が可能(PPPoEでは最大1GMbps, IPoEでは最大10GMbps)
  • 通信が安定する
  • 簡単に設定できる

欠点は以下の通り。

  • IPv4のみに対応しているWebサイトは閲覧できない(IPoE IPv4 over IPv6を利用すれば可能)
  • 専用のプロバイダ・ルーターを契約する必要がある
  • 外部環境によっては通信速度が落ちる可能性がある

10.5. その他のネットワークの用語

10.6. 暗号化技術の基礎

暗号化方式には共通鍵暗号公開鍵暗号の2つがある。

10.6.1. 共通鍵暗号方式

共通鍵暗号方式では暗号化と復号に同じ鍵を使用します。共通鍵暗号で使用するアルゴリズムには「RC4、DES、3DES、AES」などがある。

現在主流な暗号化方式は「AES」。AESは無線LANのWPA2でも採用されている暗号化方式。 共通鍵暗号では通信接続先ごとに共通鍵を生成する必要があり、また鍵交換を盗聴されないよう安全に行う必要がある。

  • メリット:ファイルやデータの暗号化にかかる処理速度が早い
  • デメリット:データを送る人の数だけ管理する鍵が増える。送信した鍵が第三者に盗まれる危険がある

10.6.2. 公開鍵暗号方式

公開鍵暗号方式では暗号化と復号に別の鍵を使用します。暗号化に使用する鍵は公開鍵と言い、復号に使用する鍵は秘密鍵と言う。 公開鍵暗号では受信者側にて公開鍵と秘密鍵を生成します。暗号データは秘密鍵でしか復号することができない。 公開鍵だけを送信側の暗号鍵として公開して、その公開鍵で暗号化されたデータを秘密鍵を使用して復号する。 公開鍵暗号で使用するアルゴリズムにはRSAとElGamalがある。

  • メリット:作る鍵が1つで済むので管理が楽。鍵を盗まれる危険がない
  • デメリット:データの暗号化にかかる処理速度が遅い

暗号化技術