2. 物理層の技術
2.1. 有線LANで使用されるケーブル
有線LANで使用されるケーブルは主に銅線製のケーブルと光ファイバのケーブルに分類できる。
- 銅線
- ツイストペアケーブル(LANケーブル)
- 同軸ケーブル
- 光ファイバ
- シングルモードファイバ(SMF)
- マルチモードファイバ(MMF)
- Graded Index型
- Step Index型
項目 | ツイストペアケーブル | 光ファイバケーブル |
---|---|---|
伝送媒体 | 銅 | ガラス |
伝送速度 | 遅い | 速い |
信号減衰 | 大きい | 小さい |
伝送距離 | 短い | 長い |
電磁ノイズの影響 | 大きい | 小さい |
取り扱いのしやすさ | しやすい | しにくい |
価格 | 安い | 高い |
2.2. ツイストペアケーブルの構造と種類
2.2.1. ツイストペアケーブルの構造
ツイストペアケーブルの命名は○○BASE-T
や○○BASE-TX
で表記される。
この表記のTはツイストペアケーブルを表す。
ツイストペアケーブルは8本の銅線を2本ずつペアにツイストし束ねた構造となっている。 ケーブルをアルミ箔なのでシールドしているものはSTPケーブル。 シールド処理をしていないものはUTPケーブルとなる。
STPケーブルは電磁がは多く発生している工場などの特殊な環境で使用される。
2.2.2.ストレートケーブルとクロスケーブル
ツイストペアケーブルはストレートケーブル、クロスケーブルの2種類がある。 外見上はRJ-45と呼ばれるコネクタから見える配列が異なる。
ストレートケーブルはMDI、クロスケーブルはMDI-Xという2つの物理ポートタイプがある。
機器 | ポート |
---|---|
PC,サーバなど | MDIポート |
スイッチ | MDI-Xポート |
MDIとMDI-Xポートはストレートケーブルで接続。 MDIとMDI、MDI-XとMDI-Xの場合はクロスケーブルで接続する。
最近はAuto MDI/MDI-X機能のおかげでケーブルを気にする機会は減りつつある。 Auto MDI/MDI-X機能は相手のポートタイプを判別し受信送信タイプを切り替える機能となる。
2.2.3. カテゴリ
カテゴリはツイストペアケーブルにある伝送速度に直結する概念。 カテゴリが大きいほど伝送速度が速い規格に対応できる。
カテゴリ | 対応周波数 | 主な規格 | 最大伝送速度 | 最大伝送距離 |
---|---|---|---|---|
cat3 | 16Mbps | 100BASE-T | 16Mbps | 100m |
cat4 | 20MHz | Token Ring | 20Mbps | 100m |
cat5 | 100MHz | 100BASE-TX | 100Mbps | 100m |
cat5e | 250MHz | 1000BASE-T, 2.5GBASE-T,5GBASE-T | 1Gbps/2.5Gbps/5Gbps | 100m |
cat6 | 250MHz | 1000BASE-T,10GBASE-T | 1Gbps/10Gbps | 100m/55m |
cat6a | 500MHz | 10GBASE-T | 10Gbps | 100m |
cat7 | 600MHz | 10GBASE-T | 10Gbps | 100m |
2.2.4. ツイストペアケーブルの規格
100BASE-T
100BASE-TはMDIの1,2番ポートを送信に、3,6番ポートを受信に使用する。 その他のポートは使用しない。
1000BASE-T
1000BASE-Tは100BASE-Tに加えて4,5,7,9番ポートも送受信に使用する特徴がある。 この規格は最近のネットワーク機器で最も使用されている規格となる。
1000BASE-Tは1GBpsという高速通信を実現している。
10GBASE-T
10GBASE-Tは現在使用されているツイストペアケーブル規格の中でもっとも高速なケーブル。 1000BASE-Tは4ペア8芯の銅線をフル使用するのは1000BASE-Tと同じだが、短時間にたくさんのデータを詰め込むことで高い伝送速度を実現している。
2.5G/5GBASE-T
2.5G/5GBASE-Tは2016年に策定された規格でマルチギガビットイーサネット、NBASE-Tとも呼ばれる。 特徴としては10GBASE-Tの技術を一部応用し高層化が図られて、2.5G/5Gbpsを実現している。
この2つの規格はcat5eをサポートするため配線時のコストに需要がある。 これは10GBASE-Tでcat5eへの対応を速度を上げる代わりに対応しなかったためにある。
2.2.5. ツイストペアケーブルの注意点
接続時の注意点
ツイストペアケーブルの接続時に気にするポイントは以下の2つ。
- ポート速度(スピード)
- 双方向通信方式(デュプレックス)
スピードとデュプレックスの設定を必ず隣接機器と合わせる必要がある。 スピードはPCやサーバのNIC、ネットワーク機器のポートに合わせて設定する。
双方向通信方式は半二重通信、全二重通信がある。 半二重通信は10BASE2や10BASE5などの過去の規格で使用されていたが、近年ほとんど利用されない。 現在では全二重通信になるように設定する必要がある。
スピードとデュプレックスに設定は手動もしくはオートネゴシエーションで設定が可能となってる。 なおオートネゴシエーションはFLPという信号をやり取りして決定する。
延長時の注意点
ツイストペアケーブルは仕様上100mまでしか延長できない。 そのためこれ以上延長する場合は中継機器が必要となる。
リピータハブの活用
リピータハブはバカハブとも呼ばれ、受け取った信号をすべてのポートに送る装置。 現在はこの性能がネットワークトラフィック効率敵に良くないためスイッチングハブに置き換わりあまり使われていない。
しかしながらリピータハブはトラブルシューティングに使える。 これはすべてのポートに信号が送られるという仕様が検証用PCに接続しPCでWiresharkなどで確認できるということである。
2.3. 光ファイバケーブルの構造と種類
2.3.1. 光ファイバケーブルの構造
光ファイバケーブルの命名は○○BASE-SX/SR
や○○BASE-LX/LR
で表記される。
この表記のSはShort Wavelength、LはLong Wavelengthを表す。
これはそれぞれレーザの種類を表しており、レーザの種類は伝送距離とケーブル直接関係する。
光ファイバケーブルはガラスを細い管にしたものでコアとクラッドという2種類の材質で構成されている。 光の伝送路(モード)はこの2つの材料を2層構造にしたもので構成される。
実際のデータ送信は2芯1対で使用することで全二重通信を可能にしている。 また光ファイバケーブルの特徴としてツイストペアケーブルと比べてかなり長く延長可能となっている。
2.2.2.MMFとSMF
光ファイバケーブルはMMF、SMFの2種類がある。
マルチモード光ファイバ(MMF)
MMFはコア径が50μm~62.5μmの光ファイバーケーブルで10GBASE-SRや40GBASE-SR4などに使用されている。 コア径が大きいのでモードが分散しマルチとなる。そのため伝送損失が多くなるため伝送距離は(MAX550m)ほどとなる。
メリットとしてSMFより安く扱いやすいことがある。 またコアの屈折率によりSI型とGI型に2種類があるが、現在はGI型が主流となっている。
GI型はコアの屈折率を変化させてすべての光の伝送路が同じ時間で到着するようにしていることで伝送損失を小さくしている。
シングルモード光ファイバ(SMF)
SMFはコア径が8μm~10μmの光ファイバーケーブルで1000BASE-LXや10GBASE-LRなどに使用されている。 またコアとクラッドの屈折率を適切に制御してモードをシングルにしている。
そのため長距離伝送に優れており、データセンターやISPの施設でよく利用される。
SMFとMMFの比較表
項目 | MMF | SMF |
---|---|---|
コア径 | 50~62.5μm | 8~10μm |
クラッド径 | 125μm | 125μm |
モード分散 | あり | なし |
伝送距離 | ~550m | ~70km |
伝送損失 | 小さい | 大きい |
取り扱いのしやすさ | しにくい | さらにしにくい |
価格 | 高い | さらに高い |
2.3.2.MPOケーブルとブレイクアウトケーブル
MPOケーブル
MPOケーブルは複数の光ファイバケーブルを1ポンに束ねたケーブルのこと。 両端にはMPOコネクタが装着されている。
MPOケーブルは必要な光ファイバケーブルを減らすことができるためケーブル管理をシンプルにできる特徴がある。 またMPOケーブルの種類は束ねる芯数により種類があり最近は12芯、24芯のいずれかが使用される。
ブレイクアウトケーブル
ブレイクアウトケーブル(ファンアウトケーブル)はMPOケーブルで束ねた芯線を途中でばらしてあるケーブル。 ばらすメリットは以下の通り。
- 接続モジュールパターンが増える
- 物理接続のバリエーションを増やせる
2.3.3. 光ファイバケーブルのコネクタ
光ファイバケーブルのコネクタでよく使用されるのはSCコネクタ、LCコネクタ、MPOコネクタの3種類がある。
SCコネクタ
SCコネクタはプッシュプル構造のコネクタで安く扱いやすいのが特徴。 使用するのはラック間を接続するバッチパネルやメディアコンバータ/ONUと接続するのに使用される。
最近は集約効率の観点からLCコネクタに置き換えられつつある。
LCコネクタ
LCコネクタはツイストペアケーブルと同じコネクタ(RF-45)と同じように差せる特徴がある。 SFP+/QSFP+モジュールとの接続に使用される。
MPOコネクタ
MPOコネクタはSCコネクタと同じようにさせるプッシュプル型の構造となっている。 40GBASE-SR4や100GBASE-SR4/10のQSFP28モジュールとの接続時に利用される。
2.3.4. 光ファイバケーブルの規格
光ファイバケーブルの規格は○BASE-□△
で表され、□
の部分がレーザの種類を表す。
10GBASE-R(10GBASE-SR/10GBASE-LR)
10GBASE-Rは1波あたり10Gbpsの光を送受信で流す。 10GBASE-SRと10GBASE-LRの違いは使用する光の波長で、10GBASE-SRは850nmの波長で最大550mまでMMF光ファイバで伝送が可能。 一方10GBASE-LRは1310nmの波長で、SMFで最大10kmまで伝送することが可能となっている。
40GBASE-R(40GBASE-SR4/40GBASE-LR4)
40GBASE-Rは40Gbpsの伝送速度を出せるイーサネット規格のこと。 よく使われるのは40GBASE-SR4と40GBASE-LR4となっている。
40GBASE-SR4は10GBASE-SRを4芯束ねたものに近く、1波当たり10Gbpsを送受信で使用する。 40GBASE-SR4は伝送路を増やすことで高い伝送度を実現措定る。
40GBASE-LR4はWDM(光波長分割多重)と呼ばれる技術で1芯の光ファイバに4本の光を流すことで実現している。
100GBBASE-R(100GBASE-SR10/100GBASE-SR4/100GBASE-LR4)
100GBASE-Rは100Gbpsの伝送速度を出せるイーサネット規格のこと。 よく使われるのは100GBASE-SR10と100GBASE-SR4と100GBASE-LR4となっている。
100GBASE-SR4は価格の下落の関係と、必要な芯数が少ないことからよく使われる。
光ファイバ | 説明 | 1波当たりの速度 | 使用芯数 |
---|---|---|---|
100GBASE-SR10 | 10本の10GBASE-SRを束ねたもの | 10Gbps | 20本 |
100GBASE-SR4 | 100GBASE-SR10の後継規格 | 25Gbps | 8本 |
100GBASE-LR4 | 100GBASE-SR4/10の合わせたもの | - | - |
光ファイバ対応規格表
光ファイバイーサネット規格 | 伝送速度 | 呼称 | 対応ケーブル | 最大伝送速度 (mまたはkm) | トランシーバモジュール | コネクタ形状 |
---|---|---|---|---|---|---|
10GBASE-R | 10 Gbps | 10G | SMF | 40 km | SFP+ | LC |
25GBASE-R | 25 Gbps | 25G | SMF/MMF | 100 m (MMF), 10 km (SMF) | SFP28 | LC |
40GBASE-R | 40 Gbps | 40G | SMF/MMF | 100 m (MMF), 10 km (SMF) | QSFP+ | LC, MPO |
100GBASE-R | 100 Gbps | 100G | SMF/MMF | 100 m (MMF), 10 km (SMF) | QSFP28 | MPO |